自社に関心を持った人はAIに何を尋ねるのだろう、と考え始めると、思いのほか手が止まってしまうことはないでしょうか。自社に関心を持ったユーザーが、AIにどんな質問を投げるのかを事前に想定しておくことは、AI検索対策の土台になります。結論としては、指名検索に近い質問だけでなく、比較検討段階の質問、業界名からの質問まで、複数の階層で想定しておく必要があります。以下、想定の進め方を整理します。

質問の想定は、顧客理解のやり直しでもある

質問を書き出す作業を進めていくと、これは単なるAI対策の準備ではなく、自社が顧客をどれだけ理解しているかを試す作業でもあることに気づきます。すらすら書けない階層があるとすれば、それは知識の不足というより、顧客の意思決定プロセスそのものへの解像度が粗いというサインなのかもしれません。

なぜ質問を想定する必要があるのか

自社名を検索してもらえる段階であれば、話は比較的単純です。厄介なのは、まだ自社名を知らないユーザーが、業界名や課題感からAIに質問を投げてくる場面です。この場合、自社が候補として挙がるかどうかは、質問の言葉と自社の情報発信がどれだけ結びついているかにかかっています。想定していない質問の中で自社が登場していない、という状態に気づけるかどうかが、最初の分かれ目になります。

上流の質問ほど、答えられる企業が少ない

課題起点の質問に答えられる企業は、実はそう多くありません。自社名や商品名を主語にした説明は用意していても、「そもそもこの課題をどう解決すればいいのか」という、より抽象度の高い問いに向き合ったコンテンツを持っている企業は限られています。裏を返せば、この階層はまだ手薄な領域であり、早く着手した企業が有利になりやすい場所でもあります。

質問の3つの階層

想定すべき質問は、おおよそ3つの階層に分けられます。

  1. 指名検索に近い質問:「〇〇という会社は信頼できますか」など、既に自社を認知している前提の質問
  2. 比較検討段階の質問:「〇〇と△△、どちらがいいか」「〇〇業界でおすすめのサービスは」など、複数の選択肢を比較する質問
  3. 課題起点の質問:「〇〇という課題を解決するには」など、自社名も業界名も出てこない、より上流の質問

多くの企業は1の階層は意識していても、2と3の階層まで手が回っていないことが多いものです。

想定しすぎて動けなくなる手前で

質問の階層を細かく考え始めると、パターンは際限なく増えていきます。すべてを網羅してから動き出そうとすると、いつまで経っても着手できません。完璧なリストを最初から目指す必要はなく、まず思いつく範囲で書き出し、実際に試しながら精度を上げていくほうが、結果的には早いはずです。

実際の顧客の言葉を集める

質問を想定する際、社内の言葉だけで考えると、実際の顧客の感覚とずれてしまうことがあります。営業やカスタマーサポートに寄せられる問い合わせ、商談の初回で聞かれる質問、口コミサイトのレビューの言い回しなど、顧客が実際に使っている言葉を集めておくと、想定の精度が上がります。専門用語を使わない、率直な聞き方のほうが、AIへの質問としても自然であることが多いものです。

社内の思い込みを疑う場面

質問リストを作っていると、自社の強みだと思っていた要素が、実は顧客にとってはさほど重要ではなかった、という食い違いに気づくことがあります。逆に、社内ではあまり意識していなかった些細な機能が、比較検討段階では意外と決め手になっていたりもします。想定と実際のずれに気づけるかどうかは、最初から正確に当てようとする姿勢よりも、ずれることを前提に何度も見直す姿勢のほうが、結局は役に立ちます。

想定した質問を実際に試してみる

質問リストができたら、実際に複数のAIへ投げてみる番です。ChatGPTに自社が表示されないで触れたように、同じ質問でも言い回しを少し変えるだけで結果が変わることがあります。1つの階層につき数パターンずつ試し、どの言い回しなら自社が登場しやすい傾向にあるか、逆にどの言い回しでは登場しないかを記録しておくと、あとから振り返る材料になります。

一度で終わらせない

質問リストは一度作って終わりではありません。サービス内容の変化、顧客層の広がり、競合の動きによって、想定すべき質問も少しずつ変わっていきます。AI検索対策として何から始めればいいかでも触れた定点観測の考え方と合わせて、質問リスト自体も定期的に見直す対象として扱っておきたいところです。作ったリストを引き出しにしまい込むのではなく、四半期ごとに眺め直すだけでも、追加すべき質問や、もう古びた質問に気づけます。想定はいつも仮のものであり、確定した名簿ではありません。

よくある質問

Q. 質問はいくつくらい用意すればいいですか。
A. 決まった数はありません。まずは3つの階層それぞれで数個ずつ、合計10〜20個程度から始めて、様子を見ながら増やしていく進め方が無理がありません。

Q. 業界特有の専門用語も含めるべきですか。
A. 含めても構いませんが、それだけに偏らないようにしてください。専門用語を知らないユーザーが使う、より率直な言い回しも合わせて用意することをおすすめします。

Q. 競合が使われている質問はどう扱えばいいですか。
A. 自社が登場していない質問として記録し、なぜ登場していないのかを確認する材料として活用してください。無理に競合を排除しようとする必要はありません。